（食堂でパーティ）（食堂でパーティ）
真紀の携帯が鳴る。
「タカシか？」と言い携帯を持って食堂を出る。
茜から真紀の母親が家出したことを聞いていた文太は気になり、後を追う。
「…かあさん戻ったのかよ…あいつ…浮気相手の所……離婚……。でも、良かったじゃねぇか、じゃあな。」
電話を切って振り返ると、そこに文太が。
「お母さんが家に戻って来たのか？」
「あぁ。」そっけない真紀。
「『離婚』とか聞こえたけど…」
「結局あのオヤジ、浮気相手の所へ行っちまったみたいだ。で、かあさん戻ってきたんだよ。これから離婚の話を進めるんだって。」いくぶん明るい表情になった真紀。
「そりゃあ良かったじゃないか。おまえ『あんなオヤジぶっ殺してやる』とか言ってたけど、なら、もう、ひどい目に合うことも無いだろ。」
「まぁな。」しばらく間をおき「…さっきのケーキって何だ？」
「別に」
「そんなはずないだろ。一平と茜でどうしたってんだよ。」
〜〜 事情を仕方なく白状する文太 〜〜
（ 回想は省略 ）
「…で、俺も一平も『本当はどっちなんだろう』って…」
急にうれしそうに「お前ら相当な幸せもんだな。『どっちも』ってのは、結局、振られちまったんだよ！。そんくらいの事、分かんないのか？ハハハ…」と笑いながら真紀は食堂へ引き返す。
取り残された文太は複雑な表情で立ち尽くす．．．。
（茜と里香の部屋）
ベッドに横になるが、なかなか寝つかれぬ茜…。
今井家との出会いから、父母の死、そして、学園での事が思い出されて、涙が．．．。
それに気づいた里香「どうしたの？」。
「何でもないよ。全然眠くないんだ。」
「ねぇ、あんた。ひょっとして泣いてんじゃないの？」
「そんな事無いよ…」こぼれかけた涙をシーツでそっと拭く茜。
「アンタみたいな脳天気で単純馬鹿な性格でも、みんなと別れる事考えて泣く事もあるんだ」ベッドから起き上がる里香。
茜も起き上がり「オマエみたいなうるっせー奴と一緒だと息が詰まっちまうんだよ。だから眠れないんだっ。朝が来る前に窒息して死んじまいそうだ。ちょっと外でいい空気でも吸って来よっと。」
部屋を出て行く茜。
（深夜の男子部屋）
「オイ、さっきケーキの話が出たときはちょっとヤバかったな。でも、やっぱ茜は俺の方に気があるような…」
一平の言葉の途中で文太が「その事なんだけど…さっき真紀にゲロっちまったよ。うるさく言うからどうしようもなくって…」
「まさか『二人とも好きっ！』なんて言ってないだろうな。真紀はおまえに気があるんだから、あいつまた怒って『出て行く』とか言い出すぞ。」
そこへ突然、茜が二人の部屋へ入ってきた。
「どうしたんだ？」
「眠れなくってさ、里香がうるさくて。よっぽど、おまえらと居た方が気が楽だよ。…ここで寝ちまおうかなぁ。」と茜が冗談交じりに２つのベッドを物色するように見比べる。
「こっちでどうぞ〜」一平だ。
「…あのさぁ…」消え入りそうな声で文太が「…真紀に聞いたんだけど…『どっちも』ってのは…二人とも振られたって…」
「おまえ、そんな事までしゃべっちまったのかよ」と一平。
茜が「俺はそんな深い意味で言ったんじゃなくて、『どっちもおんなじくらい』って素直な気持ちを言ったんだけどな。別に嫌いって訳じゃないし…。」
しばらく考え込んで一平が「じゃぁ茜、本当はどっちが好きなんだ？ちょっとは俺のほうが好きじゃないのか？。」
「…」
より深く考えて文太が「ひょっとして、俺たちより、もっと、好きな奴が他にいるんじゃないのか？」
「…」
長い沈黙の後、何かにひらめいたように一平が「あ〜っ、そぉ〜か…」。
（深夜の廊下）
「瀬島先生、当直ですか？」廊下で出会った瀬島に茜が声を掛ける。
「ああ何だ、お前か。…出て行ったかと思ったらすぐ舞い戻ってきて、戻ったかと思ったらまたすぐ明日出て行くって、一体どうなってるんだ。」明るくひょうきんに瀬島が答える。
「先生、なんか今日すごく明るいですね。」
恥ずかしそうに「そうか？、実はな、女房と寄りを戻す事になってな。今日戻ってるはずで、朝になるのが待ち遠しいんだよ。」
「ふぅ〜ん」
「まぁ、学園もクビにならずに済んだし、子供もまた作ればいいって言ってくれて、肩の荷が降りたよ。…いろいろ騒ぎを起こしてくれたけど、お前のお陰かもしれないな。」
「せいぜい感謝しろよッ。」と笑顔で茜が答える。
「明日、出発なんだから早く寝ろっ！」
「せっかく、いい人になったと思ったのに、全然変わってないじゃん。…まぁ、その方が先生らしいけど…」おふざけで色気を交えて「じゃぁ、センセイ、お・や・す・み」深々と一礼し自分の部屋へ戻る。
（よく眠れたかどうかは、想像にまかせます）
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