（夕焼けの畑） （夕焼けの畑）
「いったい、どうしたの？」と浩。
一平も「やっぱ俺のために戻ってきてくれたんだな〜」とニタニタ。
「…。」うつむき、暗い表情で何も言わない。
他の生徒や先生も次第に廻りに集まって来た。
友恵「荷物も持ってないし、お父さんはどうしたの？」
「黙ってても解んないでしょ！何しに戻ってきたのっ！」里香だ。
「あのさぁ…」と遠くを見る表情で回想する。
（回想〜駅にて）
駅の窓口で「そうですか、じゃぁ、そうして下さい。」とがっかりして振り返る父。
「どうかしたの？」
「ホントにゴメン．．．。お父さんさぁ、お前が本当に一緒に来てくれるか自信が無かったから切符１枚しか買ってなかんだよぉ。もう一枚買おうと思ったんだけど、今日の切符は全部売り切れだって言うんだよ。…困っちゃったよ。」情けなく父が娘に訴える。
「じゃぁ、どうすんだよ！。俺にず〜っと立ちっぱなしで新潟まで行けって言うのかよ！」と今にも父親に蹴りを入れそうな迫力の娘。
「だからさぁ、明日の朝の切符に変更したんだよ。そうすりゃぁ、お前と一緒に座って新潟まで行けるだろぉ。お父さん、それがすごく、うれしんだよ。」娘に甘えた態度の父。
「今晩、どうすんだよっ！」
「東京で泊まるさ。メシだってうまいものどっこかに食べに行こうよ。」
「それはいいんだけどさぁ、金、あんのかよ？」
「あぁぁっ．．．そうなんだよ。お父さんはカプセルホテルで良いんだけど、お前はそう言う訳には行かねーから、どうしようかと．．．．」
父の言葉をさえぎって「分かったよ。俺は今晩、学園で泊まるから」
「ほんとにそれでいいのかぁ？．．．悪いなぁ．．．。」
「お父さん、ちゃんとしてよ。」
「…」
「じゃぁ、俺は戻るから。あっ、新潟の吉岡さんに、ちゃんと連絡しといてよ。遅れるからって。」
どこまでも手の掛かる、頼りない父親である。「そうしとく．．．」
「じゃぁな、俺行くから。また明日っ！」と元気に歩き出す娘。
目をクリクリさせてお茶目に「…と言う訳で、出発が１日延びたって事になっちまってさ。…悪いんだけどさ、里香、今晩、俺を泊めてくれよ。」
「それはいいんだけど、…それにしてもアンタのお父さんって、相変わらずいい加減ねっ。」
「何だあ、もういっぺん言って見ろっ！父さんの悪口言ったら、ぶっ飛ばしてやるって言っただろっ！」
「まあ、まあ、兄弟なんですから仲良くしてください。」仲裁に入る健一。「僕は、もう一晩一緒に居られるって事で、すごく嬉しいです。」
「僕もっ」、「俺もっ」口々に同調する浩、一平．．．。なぜか文太も小さな声で「俺だって」
その横で鋭い視線を文太に向ける真紀…。
（食堂）
学園の食堂へ戻って、夕食が始まろうとするその時に、一平が突然立ち上がって大きな声で
「あっ、そうだ！昨日は茜の誕生日だったんだ。ちょっと遅れちまったけど、せっかくだから、みんな揃ったところでお祝いしようぜっ！…それと…送別会もいっしょになっちゃうけど．．．」
健一が最後の言葉をさえぎって「それ、いいですねっ、僕も大賛成です！誕生日と新しい生活への旅立ちをみんなでお祝いしましょう。」
「さすがお兄さま、うまい事言うもんだなぁ」一平。
「そうだわね、練馬のお家が売れたことで、すっかり茜ちゃんの誕生日忘れてしまったわ。ごめんなさいねぇ、茜ちゃん。」友恵が申し訳なさそうに、「そのお詫びと言うのも変だけど、夕食の後に先生達からにみんなにケーキをご馳走するわ。みんなで茜ちゃんをお祝いしてあげてね。」
茜、一平、文太が「また、ケーキかよ！」きれいにハモった。
「えっ？」と三人に疑問を投げかける一同。
文太の隣の真紀が「おい、文太っ、どういうことなんだよ」低くドスを聞かせた声で問いるめる。
「…」
（気が向けば、続ける事にします。）
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